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【上級】SACLAでの構造解析に必要な結晶の量を数百分の1に

2016/06/29

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概要

薬の開発にはX線を使ってタンパク質の構造を調べることが重要ですが、必要となるタンパク質の結晶は入手が困難であったり、X線によってタンパク質が壊れてしまうといった問題点があります。X線自由電子レーザー(XFEL)施設「SACLA」を用いると、少量の結晶で、かつタンパク質の破壊を抑えて測定を行うことが可能です。さらに、この研究で開発された技術「パルス液滴法」を組み合わせることで、従来の数百分の1の量のタンパク質結晶から構造を解析できるようになりました。今後、十分な結晶試料の調製が困難であったタンパク質においても、構造の決定が期待できます。

1. タンパク質がどのような構造を持っているのか、X線を使って調べると薬が作れる

X線を使ってタンパク質の立体構造を原子レベルで決定することで、タンパク質の働きがわかり、薬の開発へとつながります。必要となるタンパク質の結晶は大きければ大きいほど望ましいですが、放射光施設「SPring-8」の明るいX線を使うことで、少量のタンパク質でも構造の解析が可能となっています。しかしながら、重要なタンパク質の多くは入手や結晶の作成が難しいのが現状です。
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2. X線で結晶を壊さずに測定するのは難しい

もう一つ重要な問題点として、測定中にX線によってタンパク質が壊れてしまうことが挙げられます。SPring-8に隣接する施設「SACLA」のX線自由電子レーザー(XFEL)には、SPring-8のX線よりもさらに明るく、また発光時間が短いといった特徴があります。この特徴は、タンパク質が壊れる前に測定を行う上で重要です。
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3. SACLAのX線レーザーを使ってタンパク質を壊さず測定

SACLAにおいて、たくさんの小さな結晶をゆっくり流しながら順番にX線を当てていく手法「連続フェムト秒結晶構造解析(SFX)法」が開発されました。一つ一つの結晶はX線が当たることで壊れてしまうものの、次々と流れてくる新しい結晶を用いて構造の決定に必要なデータを集めることができます。
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4. 本研究で結晶を狙い撃ちする技術を開発

しかしながら、従来のSFX法ではすべての結晶が測定される訳ではなく、X線が当たらなかった試料は無駄になってしまいます。そこで、この研究によってX線が出るタイミングに合わせてタンパク質結晶を含む液滴(液体のしずく)を送り出す「パルス液滴法」が開発され、SFX法と組み合わせることで結晶を効率的に利用することが可能となりました。
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5. 必要な結晶の量が従来の数百分の1に

貴重な結晶を有効に使えるようになったことで、これまで構造を調べられるほど結晶が作成できなかったタンパク質についても、立体構造の決定が可能となります。新しい薬の開発につながるような、タンパク質の構造が明らかになるといいですね。

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