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【上級】光加工による磁場の寄与を明らかに

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東京大学と分子科学研究所の研究グループは、2016年3月、光を照射するナノスケールでの物質加工には、磁場が大きく関与しているという研究成果を発表しました。
この研究をきっかけにして、新たな微小加工の技術が生まれるかもしれません。

ナノレベルでの加工技術の要求

コンピュータ、スマートフォン等の電子機器には、微小なスイッチ(トランジスタ)が数十億個の単位で入っています。これらを作成するためには、ナノスケールでの物質加工が必須です。これまで、電子機器の内部に入っているトランジスタは、「集積回路上のトランジスタ数は指数関数的に増えていく」というムーアの法則にほとんど従うように発展してきました。

つまり、年を追うごとにトランジスタはどんどん小さくなっていったのです。最近では、1つのトランジスタが10ナノメートルほどのスケールとなり、数ナノメートル、またはそれ以下のレベルでの物質の加工技術の発展が求められています

微小なものの物質加工と光エッジング

ナノスケールの物質加工には、これまでカッターのように直接物質に触って加工する方法化学薬品を使う方法が用いられてきました。しかし、これらは直接ものに触れるため物質が壊れてしまう化学物質が完全に取り除けないなどの問題点があります。

そこで近年では、光を物質に当てることにより物質を加工する、光エッジングと言われる手法が注目されています。この方法はまだまだ研究段階ですが、従来の方法に比べ、直接物質に触らない狙ったところに光を当てられる、などの利点があります。

磁場研磨上級0

ただ、この光エッジングの手法には分からないことが沢山あります。
例えば、どのようなメカニズムで物質が削れているのかということについては詳しくは分かっていません。

この研究で明らかになったこと

まず、研究グループは、幅約400ナノメートル、深さ50ナノメートルほどの段差が作られた物質(ジルコニア(ZrO2))を用意し、光を照射し加工する実験を行いました。

光は電場と磁場の波で構成されていますが、物質に光が当たると、物質内部にも電場と磁場が誘起されます。そこで研究グループは、この物質内部の電場と磁場の分布を調べるために、コンピュータ上で実験を再現し、どのように電場と磁場が分布しているかの計算を行いました。

実験と計算結果を照らし合わせてみると、物質が削れた部分は、磁場が物質内に強く分布した場所と一致しているということが分かりました。

磁場研磨上級1
実はこの結果、驚くべき結果です。というのは、光の周波数で振動する電場と磁場では、電場のほうが磁場よりも物質との相互作用が大きいため、これまで磁場の効果はほとんどないと考えられていました
今回の研究では、光を照射することにより物質内に分布した電場よりも磁場の方が加工に大きく寄与しているということを明らかにしたのです。

まだまだ、磁場が影響しているかもしれない、ということが分かったという段階。なぜ磁場が分布したところが削れるかなど詳しいことは分かっていないところも多いのですが、多くの人々が見過ごしていた磁場の効果の重要性を明らかにした、ということでは非常に意味のある研究です。

今後、磁場を使った物質加工という新たな技術革新が起こるかもしれません。

-magnetic, 上級