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【上級】魔法の筒で高価な薬を大量合成!

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東京大学の研究チームから、医薬品合成に関する画期的な手法が発表されました!

本記事ではこの画期的な手法について説明したいと思います。

有機化合物の合成法

有機化合物の合成では、炭素等の元素をつなげて結合を作ったり、結合を切ったりする変換反応を行うことで、まるでレゴを組み立てるように少しづつ目的の組み合わせに近づけていき、目的の有機化合物を形作っていきます。

大まかに分けて有機合成には二種類の方法があります。一つはバッチ法と呼ばれる方法です。この方法では、原料や反応剤などを大きな釜に入れて混ぜることで目的の反応を進行させています。この方法は最も広く使われている方法ですが、様々なデメリットがあります。例えば、目的の化合物を釜の中から取り出して純度を高めなくてはなりません(単離・精製コスト)。また、反応容器(釜)の大きさを変えることが出来ないために、生産量の調整が容易でないこともデメリットの一つです。

もう一つの方法が流通(フロー)法です。このフロー法では、溶媒に溶かした原料を細長い管に流しこむことで反応を行います。このフロー法には様々な利点があります。例えばこの方法だと単離・精製のコストを抑えられたり、エネルギー効率がバッチ法に比べて高いなどが挙げられます。

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バッチ法と流通(フロー)法

しかしながらこのフロー法はまだまだ発展途上であり、特に複雑な構造を有する医薬品などの有機化合物の合成には殆ど用いられてきませんでした。

フロー合成法の課題

フロー合成法には大まかに分けて以下のような4つの分類があります。

  1. 原料A,Bを溶媒に溶かして流し、目的物を得る。
  2. 筒状の容器(カラム)に固体の原料Bを詰め、そこに原料Aを流して目的物を得る。
  3. 原料A,B及び触媒を流して目的物を得る。
  4. 触媒をカラムに詰め、そこに原料A,Bを流して目的物を得る。

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1,2の方法でも目的物を得ることは可能ですが、触媒を用いないため、行うことの出来る反応に限りがあり、目的物を効率よく生産することが出来ません。3の方法では、触媒を用いることで反応の効率を高めることが出来ますが、反応後に触媒と目的物を分離する必要があり、また触媒の再使用も困難です。

一方で4の方法では、溶媒に溶け出ることのない固体状の触媒をカラムに詰めており反応後に流れてくる溶媒にはこの触媒は全く溶け出てきません。つまり、この方法では目的の反応が効率よく進行し、更に目的物のみを得ることが出来ます。今回東京大学の研究チームは、この4の方法のみを用いて効率よく医薬品の合成を行うことが出来ることを示しました。

高効率フロー有機合成

具体的に研究チームらは、ロリプラムと呼ばれる医薬品の合成をフロー合成法によって達成しました。

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今回のフロー合成では、シリカゲルやポリスチレン等の、溶媒に溶け出さない物質を担持体として用いた固体触媒のみが用いられており、原料を溶かした溶液を順番にカラムに流しこむことによって目的のロリプラムを、単離・精製作業を経ずに連続的に得ることに成功しています。これは複雑な構造を有する医薬品合成を、固体触媒を用いたフロー合成法のみで行った初めての例であり、今後医薬品合成法がより効率的かつクリーンなものになる可能性を示しました。

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