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【中級】化学の力で動け、タンパク質!

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京都大学より「狙った細胞膜上のタンパク質を選択的に活性化できる新たな手法を開発」という論文が発表されました。細胞の表面に存在するタンパク質は細胞の内部へ情報を伝達する機能があり、私たちの体の活動にとって非常に重要なタンパク質です。このタンパク質は薬のターゲットとして有望なため、その機能を明らかにすることは非常に重要です。

しかし、細胞表面には構造がそっくりで機能が異なるタンパク質が多く存在するため、ターゲットとなるタンパク質のみの機能を観察することはとても難しいです。今回紹介する研究では、狙ったタンパク質のみを活性化(機能:オン)することに成功しました。この方法を利用すれば、原因のわかっていない病気の詳細な機能が解明に近づけるかもしれません。

1.細胞膜上のタンパク質って何?

細胞膜には機能の異なるたくさんのタンパク質(膜タンパク質)が存在します。膜タンパク質は細胞内外の物質のやりとりに重要な役割を果たすため、私たちの体の機能に大きく影響しているタンパク質です。そのため、膜タンパク質は“薬のターゲット”として有望であると考えられており、実際に創薬の60%は膜タンパク質をターゲットとしています。創薬の効率を高めるためには、薬の効果や副作用などを評価する上で膜タンパク質の機能を正確に把握することは非常に重要となります。
図1 細胞膜を模式的に描くと上の図のようになります。上の図では様々な形の膜タンパク質を描いていますが、実際には似たような形で機能が違うといった膜タンパク質が多く存在します。そのため、調べたいタンパク質の機能のみを正確に測定することは非常に難しく、狙った膜タンパク質のみを活性化して機能を調べることができる手法の開発が求められていました。

2.まずは調べやすい膜タンパク質から~On-Offがわかりやすい受容体タンパク質~

膜タンパク質の一種として、受容体タンパク質というタンパク質があります。受容体タンパク質とは、特定の分子が結合すると活性化(機能:オン)(または不活性化(機能:オフ))するタンパク質です。今回の研究では、あるアミノ酸が結合すると口を閉じるように形が変わるタンパク質が用いられました。この「口を閉じるような形の変化」を強制的に起こすことで、ターゲットのタンパク質のみ活性化させることができると、この研究グループは考えました。

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3.科学の力はタンパク質すら動かせる!

実際に、遺伝子工学により変異させた膜タンパク質に自然界には存在しない金属化合物を加えるだけで、このタンパク質を活性化させることに成功しました。このとき、変異していないタンパク質は活性化されなかったため、目的通り特定のタンパク質のみ活性化していることがわかりました。

図3

4.将来性

今回ターゲットとしたタンパク質は“グルタミン酸受容体”というタンパク質で、記憶や学習などの脳機能に関与していることが知られています。グルタミン酸受容体の詳細な機能はいまだ不明な点が多いですが、この研究の手法を応用することで、記憶や学習のメカニズムを詳細に解明できるだけでなく、神経の病気(アルツハイマー病など)に対する創薬研究につながることが期待されます。さらに、この研究の手法は他の膜タンパク質でも可能であると考えられるため、より広い応用先が考えられます。

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