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世界最小の車、はやく走らせるには?

2018/09/29

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今回は、2017年4月に行われた世界最小の車の速さを競った、ナノカーレースの科学について紹介します。ナノカーとはなにでできているのか、どんな仕組みで走るのか、どうやったら速く走らせられるのか、を紹介します。

 

今日は、世界最小のカーレースの話をするぞい!


 

カーレース?
ミニ四駆の世界大会があることなら知ってるよ!


 

ミニ四駆は、たしかに小さい車じゃな。
でも、今回のお話は、ミニ四駆よりもっともっと小さい、”ナノメートル (nm)” の大きさの車の話じゃ。


 

1 nmって、どれくらいかなぁ?


 

1 mの1,000分の1が1 mmだね。1 mmから1,000分の1にして、さらにもう一回1,000分の1にしたのが1 nmじゃ。

身近なものと比べてみると、スギ花粉の大きさは、20マイクロメートル (μm) で、まだまだ大きい。冬の時期にみんなが予防接種するインフルエンザウイルスの大きさは、100 nm で、だいたいこれの100分の1くらいの大きさが1 nm の世界じゃな。スギ花粉もインフルエンザウイルスも目に見えないが、それよりもさらに小さいのじゃ。


 

うーん・・・そんな小さな車を人間が作れるなんて、全然思えないけどな・・・。
実際どんな車なの?


 

ふぉっふぉっふぉ、最新の化学はすごく小さなものでも作れるんじゃぞ。
ナノカーの実体は、一つ一つの"分子"なんじゃ。化学反応を組み合わせて、タイヤや車軸となるパーツの分子に結合を作り、車のような形の分子を作りあげている。一つの原子の大きさが0.1 nmくらいだから、組み合わせてもせいぜい2 nmくらいの大きさというわけじゃ。実際に、今回ナノカーレースに参加したのは、下の図の6つの車 (分子) じゃ。


fig

(Nanocar raceのホームページより引用・改変)

 

確かに車っぽいものもあるけど、
なんだか全然車っぽくないものもあるなぁ・・・。

この分子が一体どうやって動くの?


 

ナノカーに微小な電圧をかけることのできる、特殊な顕微鏡 (走査型トンネル顕微鏡: STM)で ”見ながら” 走らせているんじゃ。

 

 

nanocar_movement

(1) プローブ(黒い棒)から電圧をかけて分子を動かす模式図
(2)分子が実際に動いていることを示す図
(Nature nanotechnologyのcommentaryより引用・改変)

図の(1)にあるように、低い電圧をかけたときに分子を観察する。そして、瞬間的に高い電圧をかけると、電圧の方向に合わせて素早く滑るように分子が移動する。図の(2)は、撮影された画像をつなぎ合わせて、移動している様子を示しているぞ。左下の青い影と比較すると、赤い影(分子)が移動しているのがわかる、というわけじゃ。


 

ふーん、目で見えないナノの車だから、見るためにも動かすためにも工夫が必要なんだね。


 

そうじゃな。下の写真は、実際のナノカーレースの様子じゃ。
写真の中で、みんなが画面で見ている「影」がナノカーじゃ。

 

 

ナノカー

ナノカー2

(Nanocar raceの動画より引用、一部編集)

 

ナノカーレースでは、顕微鏡で撮影された画像がパソコンに10秒に1回くらいの速度で送られてくる。それをつなぎ合わせて、ナノカーが動いていることを確認するんじゃ。色のコントラスト(明暗)としてしかナノカーがわからないから、なかなか見分けるのが大変そうじゃな。しかも、動かしている途中で化学の結合が切れて、ばらばらに分解してしまうナノカーもあるらしいぞ。(ACS Nanoの論文参照)


ナノカーを見るための装置:繊細な走査型トンネル顕微鏡

 

そういえば、ナノカーはどこの上を走ってるの?


 

1円玉くらいの大きさの金(きん)板の上がサーキットじゃ。金は、柔らかい金属の1つで、表面からほとんどのデコボコをなくすことができる。ナノカーはちょっとしたデコボコもまだ乗り越えることができないから、金のピカピカな平面が必要じゃ。


 

金の板の上をどれくらいの速さで走っているの?


 

いい質問じゃ。
1番速かったナノカーで1時間に75 nm くらいじゃな。
大きさから自動車に換算すれば、1時間に5 mしか進まない車、ということになる。


 

1時間に75 nmはとても遅いね・・・。
何でそんなに遅いのかな?


 

これまでに説明したことで理解できそうじゃぞ!

先ほど説明したように、高い電圧をかけると、電圧の方向に合わせて素早く滑るように分子が移動する。このとき、1回の移動距離は分子にもよるが、せいぜい1 nmじゃ。
それと、「10秒間に1回画像が送られてくる」とさっき説明したじゃろう?このことは、つまり「10秒間に1回しか動かせない」ということでもある。1回の移動距離が1 nmとすると、1分間で6 nm、1時間で36 nm、というわけじゃ。

優勝チームが1時間に75 nm というのは、比較的速かった、ということが分かってもらえるかのう?
ちなみに、ナノカーにどうやって電流をかけるとうまく前に進むかは、分子のことをよくよく知っている化学者の経験と勘が必要じゃ。

 

 

ナノカー3(Nanocar raceの動画より引用、一部編集)

 


 

どうやったらもっと速く走らせることができるかな?


 

分子の形のデザインが、一番ナノカーの動きにとって重要なところじゃ。
ある論文誌の寄稿では実際に、

 

 

(1)分子が車軸・車輪の形を持っていること

・・・分子の接触面積を減らして、分子が金の表面に吸着するのを抑えるための工夫じゃ。「車輪」があることも、分子の滑らかな動きには重要らしい。

(2)分子が一つの方向に動くための仕掛けがあること
・・・分子には電圧をかけて動かす、と説明したが、電圧をかけるということは、一方が+で一方がーの坂道を作るようなもの。だから、分子にプラス(+)とマイナス(-)の部分を持たせると、その坂道に沿うように動くようになる。

(3)軽いこと(軽すぎないこと)
・・・分子と金の表面の吸着力を調節するための工夫。

が重要だと言っている。
もちろん、走らせ方(顕微鏡など)の革新も必要じゃな。


 

何だか仕組みがわかると面白くなってきたな。
将来、ナノカーが小さいコンピュータや生き物の中で、分子や原子を動かしたり、ショベルカーみたいな動作が出来るようになったりしたら面白いと思うんだけどどうだろう?


 

それは面白そうじゃな!
最後に公式の動画(英語)を貼っておくぞ!
興味がわいてきたら、ぜひ見てみてほしい。


 

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AmiSaito

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