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【上級】細胞運命を自在に制御する、DNAアプタマーの可能性!

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「DNAアプタマーという化合物を用いて、狙った細胞運命を誘導する」という論文が発表されました。(2016年、東京大学のグループより)
この技術を発展させることで、再生医療などで注目されるiPS細胞の培養や分化誘導がより高効率かつ安価に行えるようになることが期待されています。
今回はこの「細胞運命を人工的に制御する」技術について紹介します。

そもそも細胞運命とは

まずは、この論文で制御の対象とされている細胞運命とは何かについて簡単に説明します。細胞は外部からの情報を細胞内にシグナルとして伝達する機構を備えています。このシグナルの伝達の際に重要な役割を担うのが、細胞膜に存在する受容体と呼ばれるタンパク質です。この受容体は、細胞外のドメインにリガンドと呼ばれるタンパク質が結合することで二量化し、それをきっかけに細胞内のドメインが活性化します。細胞内のドメインが活性化すると、更に下流に存在するたくさんのタンパク質が協調して働き、「増殖」「分化」「死」といった細胞運命がアウトプットとして生じます。

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受容体はリガンド結合により活性化し、特定の細胞運命を誘導する

それぞれの受容体ごとに結合するリガンドの種類が決まっているため、細胞は特定のリガンドに対して特定のアウトプットを返すことができます。

DNAアプタマーとは

今回紹介する論文では、本来結合するはずのリガンド(天然リガンド)の代わりにDNAアプタマーと呼ばれる分子(人工リガンド)を用いて受容体を活性化させようと試みています。
DNAアプタマーとは、特定の分子に特異的に結合するDNAのことです。DNAと聞くと「遺伝情報を司る」というイメージがありますが、最近ではこのような使われ方もします。
DNAは以下の図のように、ATGCという4種類の塩基が水素結合を形成することによって、2本のDNA鎖が会合しています。

DNA ATGC
塩基には窒素や酸素が多く含まれ、AとT、GとCのペアで水素結合を形成する

DNAのこの水素結合を作りやすい性質により、塩基の配列を変えることで様々な形をとらせることができます。例えば、あるDNA鎖の中で1部分は塩基のペアを並べて二重らせんを作らせ、その先ではあえてペアを作れない配列にすることで、剛直な棒の先端に柔軟な領域がくっついたような構造を作ることもできます。
このような構造配列により、DNAアプタマーは様々な分子に特異的に結合することができます。

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DNAアプタマーの構造の例

肝細胞培養への応用

本研究では、肝細胞増殖因子というリガンド及びその受容体に目をつけ、その代替リガンドをDNAアプタマーを用いて作製しています。肝細胞増殖因子は、その名の通り肝細胞(肝臓の細胞)の増殖や分化に必要とされるリガンドです。
肝細胞を作製する際、現在は天然のリガンドを使用しています。しかし、タンパク質でできた天然リガンドは合成が難しく、安定性の低さや高価さの問題がありました。
それらの問題をDNAアプタマーを用いることで解決できることを本論文は提示しています。
「人工のリガンドなんてものを細胞に使って大丈夫なのか」と思う方もいると思いますが、実際に天然のリガンドと同様な受容体活性化を誘導できることも示されています。そしてこのDNAアプタマーはもともと生体に存在するDNAを用いているために、生体へのダメージもほとんどないと考えられています。

今後の展望

現在iPS細胞を用いた再生医療が脚光を浴びていますが、iPS細胞を用いた細胞組織の形成には多くの時間とコストが必要です。下の例は、iPS細胞から肝細胞を作製する為のプロトコルの一例です。(参考: 組織培養研究 Vol.32 (2013) No.1 P.183-187)

Hepatocyte_differntiation
iPS細胞が肝細胞に分化していくフロー

このように、幹細胞から目的の細胞を作り出す際には、多くのステップと多数のリガンドが必要とされています。原理上、配列を変えることにより様々な受容体に結合するDNAアプタマーを作製することができます。本研究のような代替リガンドが今後さらに研究されていくことで、より簡易で安価に再生医療を受けられる時代が到来することが期待されています。

-DNAaptamer, 上級

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