BuzzScience

最先端の科学を、楽しく、面白く

photo credit: Royal Swedish Academy of Sciences The Nobel Prize in Chemistry 2017

【祝!クライオ電子顕微鏡がノーベル化学賞を受賞】クライオ電子顕微鏡ってなに??

2017/11/23

Pocket
LINEで送る

2017年のノーベル化学賞はクライオ電子顕微鏡の開発や発展に関わった研究者たちが受賞しました!

そもそもクライオ電子顕微鏡とは何か?クライオ顕微鏡で何ができるのか?について、すべての人に理解いただけるように、丁寧に、わかりやすくご紹介していきます!

博士!今日はやけに機嫌がよさそうだね!なんかあったの?


おお!機嫌が良いのがばれてしまったか!実は2017年のノーベル化学賞はクライオ電子顕微鏡の開発や発展に関わった研究者たちが受賞したと聞いてテンションが上がっておったのじゃ。


それで機嫌がよかったんだ!博士ってやっぱり単純だな~


 

【コラム:2017年のノーベル化学賞について】

なぜクライオ電子顕微鏡が受賞できた!?何がそんなにすごいの?

博士~、2017年のノーベル化学賞を受賞したクライオ電子顕微鏡って装置のことだよね?
ノーベル賞って新しい物質とか現象を発見した人に贈られているイメージなんだけど、装置が受賞するっていうのがピンとこないんだよね~。


そうじゃのう、確かに世紀の大発見のような偉業を成し遂げた多くの科学者がノーベル賞を受賞しているのう。そして、その大発見が社会の発展につながっていることも少なくないのじゃ。
そういう意味で言うと、今回受賞したクライオ電子顕微鏡は確かに新たな現象の発見ではない。じゃが、この装置は生物学や医療の面で多くの大発見につながることが期待されている装置なのじゃよ!


なるほど!今回のノーベル化学賞は、一つの大発見が受賞したんじゃなくて、多くの大発見が期待されている装置が受賞したんだね!!


じゃあ、このクライオ電子顕微鏡ってどんなことができる装置なの??


クライオ電子顕微鏡はタンパク質の構造を原子レベルで観測できる装置なのじゃ。


タンパク質の構造を観測することってそんなに大事なことなの?


良い質問じゃ。タンパク質は我々が生きるために、なくてはならないものなのじゃよ。
例えば、生きるために必要な物質を作り出したり、物を運んだりと、様々な役割があり、まるで体の中で機械のように働くのじゃよ。


へ~!タンパク質ってそんなにすごい物なんだ!


そのタンパク質がどのように働いているのかを知るためには、やはりそのタンパク質の構造を知る必要があるのじゃよ。
君もそうじゃろ?例えば、機械がどのような仕組みで動いているのかを知るためには、まずはその機械がどうやって作られているかを調べるじゃろ?


そうだね!確かに形がわかればその機械がどんな動きをするのかわかるもんね!


また、タンパク質の構造を知ることは医学的な面においても重要なのじゃよ。
とあるタンパク質が病気の原因だとわかれば、そのタンパク質の構造を調べてやることで、そのタンパク質だけをやつけられる新たな薬の開発につながるかもしれんのだよ!


T-cell_CS6_eguchi構造解析がもたらす医学面での期待

なるほどね!じゃあ、クライオ電子顕微鏡の技術って、タンパク質の構造を知れるってだけじゃなくって、そこからタンパク質の機能を知れたり、薬の開発のみたいな様々な応用につながることができるんだね!
想像してたよりすごい装置なんだね!


クライオ電子顕微鏡の仕組みを紐解いていこう

顕微鏡とは?顕微鏡で見えるもの、見えないもの

 
博士、クライオ電子顕微鏡で出来ることはわかったんだけど、クライオ電子顕微鏡の仕組みはわかってないんだ。あれってそんなにすごい技術なの?


よくぞ聞いてくれた!急にいろいろと言っても、理解が難しいと思うから、基礎的なことから説明を始めていこうかのう。君は顕微鏡を使ったことはあるか?


あるよ!!こういうものでしょ?


T-cell_CS6_eguchi

そうじゃ!君も知っていると思うが、顕微鏡は小さなものを拡大してみることができる装置なのじゃ。


そうだね!昔、理科の授業で玉ねぎの細胞とかを顕微鏡で観察したよ!!


じゃが、君が使ったことのある顕微鏡ではいくら性能が上がっても原子や分子のような、ものすご~く小さなものを観察することはできないのじゃ。


え~何で見れないの??ものすごく性能のいいレンズとか作れば見れるんじゃないの??


君は顕微鏡を使った時、光を試料にあてながら観察をしなかったか?


したよ!光を当てないと暗くてみえないもん!


実はそこに問題点があるのじゃ。実をいうと、光は小さい物を見るのにはむいていないのじゃ。じゃから、光を使って物を観察する顕微鏡は、いくら性能が上がっても分子のような細かいところまでは見れないのじゃ


 

【中上級者向けコラム:光を使った顕微鏡が小さなものを見れない理由について】

 

小さなものが見れる、電子を使った顕微鏡

 

光を使った顕微鏡には限界があるんだね!でも光を使わずに拡大してみるってどうやってするの?


当然の疑問じゃな。当り前じゃが、光よりも小さい物を見る能力にたけているものを利用しなければならない。そこで選ばれたのが、電子を使った顕微鏡なのじゃよ。
電子は光の何百倍、何千倍も小さなものを見る能力に優れているんじゃよ!だから電子を使った顕微鏡は格段に小さい物を観測できるのじゃ。


もしかしてそれって電子顕微鏡って呼ばれているもの?


そうじゃ!さすがわしの教え子!察しがいいのう!


(博士に褒められてもうれしくないな、、、)じゃあ、その電子顕微鏡とクライオ電子顕微鏡ってどんな違いがあるの?


電子顕微鏡だって完璧な顕微鏡ではないのじゃ。電子顕微鏡には、見やすい物と見えにくい物があるのじゃよ。


へ~。どんなものが見やすいの?


そうじゃの~。例えば、鉄をはじめとした金属は比較的に観察しやすいのじゃが、水やタンパク質のような生物に関わる分子は見えにくいのじゃよ。


 

T-cell_CS6_eguchi電子顕微鏡で見やすい物質、見にくい物質

【中上級者向けコラム:電子顕微鏡で見やすい物、見えにくい物】

タンパク質を電子顕微鏡で観測しようとしても、像がぼやけてしまって大まかな形しか見えないんじゃよ。
問題はそれだけではないのじゃ。電子はタンパク質を壊してしまうのじゃ。タンパク質が壊れてしまっては構造を見ることはできなくなってしまうからのう。
つまり①そもそもはっきり見えない、②すぐに構造が壊れてしまう
という問題点があり、タンパク質は電子顕微鏡での観測に向いていなかったのじゃ。


T-cell_CS6_eguchi電子顕微鏡でタンパク質が見づらい理由

 

タンパク質を電子顕微鏡で観察するための今までの工夫

 

顕微鏡っていうと生物の授業とかでよく出てきたから生物に関わる分子が見えにくいってなんか不思議だな~。


ところが、ちょっとした工夫をすることで生体分子を見れるようになるのじゃ。


なにそれ?どんな工夫?


理屈はシンプルじゃ。見えにくいタンパク質を見やすい物質でコーティングしてやるのじゃ。そうするとタンパク質が鮮明に見えるようになるのじゃよ!


T-cell_CS6_eguchi電子顕微鏡でタンパク質を見やすくするための工夫

なるほどね!確かにそうすると見やすくなるね!でも、この方法じゃタンパク質そのものを見てるのじゃなくて、コーティングした物を見てるってことだよね?
これでも大丈夫なの?


鋭いのう~。確かに君の言う通り、この方法ではタンパク質を直接見てない分、大体の形はわかるが、細かいところまで見ることはできないのじゃ!


 

【中上級者向けコラム:タンパク質に化粧!?電子顕微鏡でタンパク質を見るための工夫】

コーティングなしでタンパク質を観測できる
クライオ電子顕微鏡の登場

そこで、今回紹介するクライオ電子顕微鏡の登場じゃクライオ電子顕微鏡とはタンパク質をコーティングなしで直接観測することができる電子顕微鏡なのじゃよ。この方法ではタンパク質を直接観測しているからかなり細かいところまで観測できるのじゃよ。今では、たんぱく質を原子レベルで観測している研究も数多くあるぞ!!


【中上級者向けコラム:クライオ電子顕微鏡って何がそんなにすごいの?クライオ電子顕微鏡によってもたらさせる様々な利点】

すごーい!でも、さっき言ってた①ぼやけて見づらいのと②タンパク質が壊れるって問題点はどうやって改善したの?


よし!では、どのように改善していったのか一つ一つ見ていこう!
クライオ電子顕微鏡が発展したのには大きく分けて3つの要素があるのじゃ。


 
T-cell_CS6_eguchi

これからそれぞれについてより具体的に紹介いくぞ!


はーい!ありがとう!!


 

"試料を凍らせる”という工夫

 

まずは①試料を急速に凍らすことについてじゃ。これは、電子を使ってタンパク質の構造を見るときタンパク質が壊れることを避けるために行われておるのじゃ。
電子はかなりエネルギーが高いから試料を壊しやすいのじゃよ。試料が壊れてしまっては、構造を観測することはできんのじゃ。


T-cell_CS6_eguchi電子によって試料が壊れると構造を観測することができない

確かに!試料が壊れてるとバラバラになったものを見てるから、本当に見たいものの構造がわからないね!
試料を凍らすことで、構造が壊れることを避けてるの?


そうじゃ!試料を急速に冷凍させて、すごく低温で観測すると試料が壊れることを防ぐことができるのじゃよ!


T-cell_CS6_eguchi試料を冷凍させることで電子の照射によって壊れることを避けられる

実はの、この凍らすという工夫はクライオ電子顕微鏡の名前の由来になっているのじゃよ!


ん!?どういうこと??
クライオって人の名前じゃないの??


そうなのじゃ。クライオは低温という意味を表す英語なのじゃよ!!


へー!そうなんだ!!じゃあ、クライオ電子顕微鏡って日本語では低温電子顕微鏡ってなるんだね!!
クライオって開発した人の名前だと思ってたけど違うんだね!


 

画期的なカメラの登場

 

次に、②の電子顕微鏡自体の性能の向上についてじゃ。時代とともに電子顕微鏡の性能も上昇しているのじゃ。特に記述すべきなのはカメラの性能の向上じゃ。昔の電子顕微鏡ではカメラの前で電子を光に変換して、その光をカメラで観察していたのじゃ。


T-cell_CS6_eguchi従来は電子を光に変換して撮影していた。

なるほどね!さっきから、電子をどうやって見てるんだろう?って不思議だったんだよ。一度光にしてるんだね!


じゃがこの方法では電子を光に変換する時に像が少々ぼけてしまうという、問題点があったのじゃよ。


光に変換するってメリットだけじゃないんだね。でも、光に変換しないとカメラで像を撮れなくない?光じゃなく電子そのものを使って像を撮れるようなスーパーカメラでもあれば話は別なんだけど、、、


実はじゃな、、、そのスーパーカメラが開発されたのじゃよ!!このカメラは英語でDirect electron detectorと名付けられたのじゃ。直訳すると直接、電子を観測できる装置って意味じゃな。
電子顕微鏡はこのカメラの登場とともにさらなる発展を遂げることになったのじゃよ。


へ~、そうなんだ。科学の進展って本当にすごいね!!


T-cell_CS6_eguchi新たに開発されたカメラによって電子を直接撮影できるようになった。

 

画像をうまく処理できればより鮮明な画像に!!

 

次の話は③画像解析プログラムの向上じゃ。これまで、電子顕微鏡自体の性能の向上について話をしておったが、これからは顕微鏡で撮った画像をより鮮明に見るための工夫の話じゃ。
いくら電子顕微鏡の性能が上昇したとはいえ、撮った像はまだまだ、はっきりとは見えないのじゃよ。


そうなんだ!なんか電子顕微鏡の性能が上がったから、もう原子レベルまで見れてるのかと思った!


実はそうじゃないんじゃ。電子顕微鏡で撮った写真はまだまだ薄くてぼやけているので、構造がはっきりとはわからないのじゃ。
じゃが、そのようなぼやけた写真でも何百枚、何千枚と重ねてやることで徐々に原子レベルの構造まで見えてくることができるんじゃ!


T-cell_CS6_eguchi撮った後の画像処理でより鮮明な画像に

撮った後の画像に様々な処理をすることで、細かいところまでより鮮明にタンパク質の構造を見ることができるんだね!撮る能力だけが大事なのじゃなくて撮った後の工夫も大事なんだね!!


【中上級者向けコラム:取った後の画像をより鮮明にする方法って??】

そうじゃ。クライオ電子顕微鏡はこのような様々な工夫によってタンパク質の構造を分子レベルで理解することができる装置なのじゃよ!


へー!すごいね!!


記事の筆者がノーベル化学賞で面白いと思ったこと

わしが2017年のノーベル化学賞で面白いと思ったポイントは
タンパク質(生物学)を電子(物理学)を使って観測する装置がノーベル化学賞を受賞した』ということなのじゃ。
つまり、ここには物理、化学、生物という実に多くの分野の研究が融合して作られた装置だと思うのじゃよ!


ほんとだ!!高校の理科で学ぶものがすべて入っている!すごいね!!


わしは、様々な分野の研究が融合することで、今までにない画期的な発見や装置の開発が進められる!そんな時代が来てると思っているのじゃ!
じゃから、君も苦手な教科は捨てるのではなく、まんべんなく勉強することじゃ!
そうすると必ず将来役に立つ!!ということが今回のノーベル化学賞で最もわしが感じたことじゃな!


確かにそうだね!!
苦手意識を持たず様々なものにトライする!!これがいつかノーベル賞にもつながるかもしれないと考えるとわくわくしてきたよ!!
これからも勉強頑張るね!!


-Column