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【上級】時間と空間の織り成す「時空間結晶」とは?

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「結晶」と一見関係なさそうな「時空間」というワード。
これらが組み合わさった「時空間結晶」というものが最近提案されました。
去年発見された「時間結晶」 に加えて、結晶の可能性がさらに広がりそうです。
今回は“時間結晶“と”時空間結晶“について、これまでの結晶と比較をしながら紹介します。

研究背景:時間方向の周期性という新たな自由度

結晶は周期的に配置される原子によってできています。各原子は決まった位置から動けませんが、電子は原子の間を動き回ることができます。そのため、電子の状態(位置や速度)が結晶の性質を決めることになります。例えば、原子の近くに電子が閉じ込められてしまうとその結晶は電気を通さない絶縁体となります。
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電子の状態は結晶の構造に大きく影響されるため、同じ構造を持った結晶は似たような性質を持つことが多々あります。この特徴は物質の設計をする上で役に立っています。

一方で別のアプローチとして、あえて外部から刺激を与えることで元々の性質とは異なるものを得ようとする試みもあります。そうした観点から注目を集めているのは、時間方向に周期性を持つ操作です。
例えば、レーザー光を照射することで結晶中の電子を振動させることができます。レーザー光によって振動する電子の状態は時間方向に周期性を持つため、時間周期を持つ結晶を作り出すことができます。

重要なことは、その性質をより自由に人為的に制御することが可能であることです。もちろん限度はありますが、外部からの操作により望む性質を持つ結晶を作り出すことができるようになるかもしれません。そうした大きな可能性を秘めているのが、今回ご紹介する"時空間結晶"です。

(実際に時間周期を持つ結晶を作ることは簡単ではありません。安定的にそうした結晶が存在できる条件についても、盛んに研究されています。)

【発展】 時間方向に周期性を持つ準安定状態

周期性が重要である理由

なぜ結晶について盛んに研究されているのでしょうか? 一つの理由として、性質を理解することが比較的簡単であることが挙げられます。
結晶は周期性を持つため、同じ構造(最小単位)を繰り返すことによって構成することができます。ここで重要なのは、結晶の持つ物理的な性質も最小単位を考えれば理解できるということです。

時間方向に周期性を持つ場合にも同様の議論をすることができます。この考えを拡張し、時間方向の結晶として提唱されたものが「時間結晶」です。さらに一般化し、時間方向と空間方向を組み合わせた周期性を持つ結晶、それが「時空間結晶」です。

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(細かい点ですが、時空間結晶は必ずしも時間方向の自発的対称性の破れを伴っていないので、時間結晶の単純な拡張とは異なっています)

【発展】 自発的対称性の破れとは?

時空間結晶の特徴

時空間結晶は提案されたばかりで、分かっていることはまだ多くありません。今回の論文では、1次元と2次元の結晶に時間方向の周期を組み合わせた時空間結晶の結晶構造についてまとめられました。分かっている範囲でこれまでの結晶とは異なる点についてご紹介します。

1.新たな対称操作(結晶中の原子の位置を入れ替えること)
時間と空間は異なるものなので、時間と空間を混ぜるような回転操作はできません。よって、180度回転のみが可能となります。例えば、二次元の結晶であれば二つの軸の間へ原子を移すような45度の回転操作が可能ですが、二次元の時空間結晶ではそうしたことができません。
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また、ある面に対して鏡写しの入れ替え(鏡映)をすることもできます。通常の結晶よりも許される操作の種類は少ないですが、これらの操作を使って時空間の対称操作を定義することができます。

2.新たなトポロジカル量
トポロジカルな量とは、「連続的な変形で変わることのないような量」のことです。例えば、ドーナツと球体はトポロジカルに異なっています。なぜなら球体の形を少し歪めてみても、ドーナツのように中心に穴を開けることはできないからです。つまり、穴の数がトポロジカルな量となっています。

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トポロジカルな量にもいろいろな種類がありますが、時空間結晶ではとても簡単な形で定義することができます。その理由は時間と空間の両方で周期性を持つためです。周期性があるということは、一つの周期分だけ進んだ後で同じ場所に戻ることを意味します。
下の図のように時空間結晶のトポロジカルな量は、「スタートしてから元の位置に戻るまでに周回した回数」と考えることができます。トポロジカルな量(a,b)はそれぞれ空間方向に周回した数をa、時間方向に周回した数をbを表しています。

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(同じ色の人影は周期性によってつながっています)

結晶の場合、空間方向にしか移動できないので一周すると元の位置に戻ります。一方、時空間結晶では時間と空間の二つの方向に移動することができるので、元の位置に戻る前にぐるぐる回りながら進むことができます。

最後に

まだ時空間結晶は提案されたばかりで、これから更なる研究が必要となります。時間方向の操作は人為的に制御できるため、より自由に物質の性質をコントロールすることができるようになると期待できます。また、時間方向と空間方向の周期性を組み合わせることで、これまでにない結晶が得られるかもしれないと思うと楽しみですね。

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