kashiwa-min

【研究室紹介】東京大学 松田研究室

2018/08/15

Pocket
LINEで送る

第2回目の研究室紹介は、東京大学柏キャンパスにある松田康弘研究室です。
東大柏キャンパスは東京から離れたキャンパスですが、ノーベル賞を受賞した梶田隆章先生が所属する宇宙線研究所など、さまざまな研究所があります。
そのひとつ、物性研究所に所属する松田康弘先生の研究室に今回は注目してみましょう。松田康弘准教授・博士課程3年の野村和哉さんにご協力いただき、研究の最前線を覗かせていただきました。

kashiwa-min

研究所が集まる柏キャンパスには、主に大学院生以上が通います。まさに研究専門のキャンパスです。

high-mag-min

今回取材させていただいた松田康弘研究室は、入口から入って少し奥の国際超強磁場科学研究施設にあります。

 

松田康弘研究室ってどんなところ?

松田康弘研究室は、東京大学大学院新領域創成科学研究科物質系専攻に所属する研究室です。
この研究室は国際超強磁場科学研究施設にある研究室のひとつで、ここでは「強磁場」、すなわち強い磁場を発生させ、それを利用して物質の性質を調べる研究を行っています。

強磁場ってなに?

磁石のよこに別の磁石を置くと、S極とN極は引き合い、S極とS極は反発します。
これは2つの磁石それぞれが磁場と呼ばれるものを感じているからです。
身の回りにはたくさんの種類の磁石がありますが、市販で買える磁石が生む磁場の強さは1テスラ(テスラ:磁場の単位)ほどです。これに対し、国際超強磁場科学研究施設ではなんとその100倍の強さの100テスラ以上の磁場を発生させて実験を行っています。国内の主要な強磁場施設は、他には大阪大と東北大にありますが、さらにこちらの研究施設では磁場の大きさで985テスラという世界最高記録を達成し(2018年発表)、いま強磁場の研究が注目を集めています。

このように、発生させる磁場の限界に挑戦し、さらにその「強磁場」下で物質が示す未知の性質を解き明かすのが松田研究室の研究概要となっています。

ここでは、そのような強い磁場を使った実験を実際にどのように行っているのか、松田研究室所属の博士学生である野村さんの1日に密着して見ていきたいと思います。

研究室を覗いてみよう

松田研究室では実際にどのように実験が行われているのでしょうか。

 

実験室の様子を覗いてみましょう。

P1012189-min
実験室に入ったところ。長い廊下が続く。

 


デスクには、メモを取るためのノート、暗いところを照らして異常がないかチェックするためのランプなど、様々なものが並んでいる。

100テスラを越える磁場を発生させる方法はいくつかありますが、今回は一巻きコイル法という方法で強磁場を発生させる実験を見学させていただきました。
この方法の原理はシンプルで、高校の物理で習ったように、コイルに電流を流すことでコイル内部に磁場を発生させるというものです。
大きな電流を流せば流すほど、コイル内部には強い磁場が発生します。
しかしながら、100テスラを越えるほどの磁場を発生させるくらい大きな電流を流すとコイルにはとてつもない強さの電磁力がかかるので、コイルは10マイクロ秒(1秒の10万分の1!)のあいだ磁場を発生させた後にすぐ爆発して破壊されてしまいます
このような方法は破壊型と呼ばれる磁場の発生手法で、この方法では磁場が発生しているほんの短い間にデータを取っています。


磁場発生のために使うコイル。様々なサイズがあり、これらは全て特注品。

 


銅色の部分が、今回の実験で使うコイル。大電流に耐えられるように、かなり太いものになっている。緑色の円筒状の部分の中に、磁場をかけたい物質を入れる。

 


強磁場を発生させるスペース。磁場発生後はコイルが爆発して危険なので、実験装置の周りをガードしている。

 


実験の準備を進める野村さん。強磁場を発生させられるのはほんの一瞬。コイルの真ん中に試料が来るように位置をしっかり調整。

 


入念にチェックして、準備完了!

 


磁場を実際にかける時は、装置から離れた部屋に退避。危険なので周りに人が来ないよう、実験前には放送でアナウンス。

 


離れた部屋にある装置を操作して、コイルに大電流を流す!

 


(同様の実験の様子がYoutubeにあがっているので、興味がある方はこちらの動画もご覧ください)

 


実験後、さっきのコイルはこのとおり真っ二つ。

 


使い終わったコイルも全部保存しておく。壊れたコイルの形から、磁場のかかり方の良し悪しが分かるときもあるそうです。

というわけで、今回の実験は終了。野村さんいわく、まずまずだったそうです。

 

「研究する」ってどんな感じですか?

博士課程3年の野村さんに、実際の研究生活について聞いてみました!

Q.松田研究室で実験をしていて、面白いなって感じるのはどういうところですか?
― 実は、強い磁場をかけた実験ができるのは世界でも限られていて、僕達の研究室では世界で最大の磁場をかけることができます。より高い磁場を発生させるのを目指しているのはここだけだし、未知の世界に挑戦してるって感じでロマンがあるのが魅力ですね。
それに、ものすごく強い磁場の中でしか見えない、新しい発見があったりするのも面白いです。例えば卒業した先輩は酸素に200テスラくらいの磁場をかけると新しい状態になることを見つけのですが、酸素のような身近な物質でもまったく新しい顔を引き出せるのが、強磁場での研究の面白いところです。

Q.研究する内容はどのように決めているんですか?
― 研究室に入って最初の修士の2年間は、先生からテーマをもらってそれに取り組むことがほとんどです。博士に入ってからは、2、3個くらいテーマを自分で考えて主体的に研究するスタイルになります。論文を読んだり学会に行ったりしてアイデアを探しますね。

Q.研究はどういった感じですすめているのですか?
― 基本的に、ほとんど準備(笑)。自分が磁場をかける実験をできる日にちは限られているので、磁場をかける10マイクロ秒のために試料とか測定器とかの準備を日々進めている感じです。
自分のような破壊型の測定の場合、データをとれる時間はほんの一瞬。だからデータが取れないこともたくさんあるし、とれたとしてもデータに対してノイズがかなり大きいから、「このデータは信頼できる!」といえるまで1年・2年のスケールで何回も実験を繰り返すことが多くて大変です。中には100回くらい繰り返してやっとデータがとれた後輩もいました。

Q.普段の平日の過ごし方とか、できれば休日はどう過ごしているかについて教えてもらえますか?
― 平日実験がある時は、朝早く来て夕方までに実験ができるように集中して作業します。破壊型実験は危険だから、磁場を発生させる時間は夕方までと決まっているんですよね。実験が終わって帰るのはだいたい21時から22時くらいです。
実験がない時は、基本的に研究室で教科書を読む勉強会に参加したり、自分の研究に関して研究室内で発表するセミナーの準備を進めたりしています。

あと、うちの研究室は昼休みにサッカーをするのが恒例行事です。その他にもボーリング大会とか、物性研究所にはいろいろイベントがあるから、そういうのに対しても全力で挑むようにしています(笑)。

休日の過ごし方っていうと、最近花火の打ち上げの資格をとりましたね。火薬の準備して、最後にどっかーんって花火を打ち上げる。いつもやっている一巻きコイルの実験と同じだなって思いました(笑)。

終わりに

今回は、東大柏キャンパスの松田康弘先生の研究室を紹介しました。
より詳しい研究内容を知りたい方は、研究室HPをぜひご覧ください。研究室の日記などもあって、研究室の雰囲気をよりつかめると思います。

記事内で紹介しきれなかった写真はこちら!

-研究室紹介

  関連記事

関連記事はありませんでした