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【初級】21世紀物理の革命!?「マジック・アングル」の実現

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これまでいくつかの記事で「二次元物質」に焦点を当てて、材料としての可能性や、物理の面白さを紹介してきました。そして今回は、この二次元物質における物理の極地のひとつとも言える、「マジック・アングル」の実現と、それを使った超伝導の発見(2018年3月、米MITのグループから報告)について紹介します。

すごい、すごいぞ!


いきなり大声あげないでよ博士、いったいどうしたの?


すまんすまん、論文を読んでいたら大声が出てしまった。あまりに面白い内容だったので、ついな。


へー、興味あるなあ。どんな内容なの?


「マジック・アングル」の実現が成功したのじゃ。


「マジック...アングル...」?マジック=魔法で、アングル=角度だから「魔法の角度」ってこと?なんだかかっこいいけど、よくわかんないや。


ひと言で言うと、「もの」と「もの」をある角度だけ回して重ねると、まったく新しい性質を示すものに変化したのじゃ!

その角度である1.1度を、魔法の角度、つまり「マジック・アングル」と呼んでいるわけじゃな。


oxigen_stability

ものとものを少し回して重ねてみると...?

1.1度って...またえらく中途半端だね。それで新しい性質が見つかるって叫ぶほどすごいことなの?


ふむ...そもそも、「ものとものを重ねる」ということに、どういうイメージをもっとるか聞いてみようか?


え、例えば、パンとレタスを重ねてサンドイッチを作るとか?

でも、パンとレタスを重ねてもパンはパンのままだし、レタスはレタスのままだし、重ねたからといってものが変わるなんてあるの?


うむ。たしかに、普通はものとものを重ねたからといって、ものの性質が変わるなんてことはないのう。


しかし、原子サイズのものどうしを重ねる場合は話が別じゃ。そのような、ものすごく小さいスケールでは、重ねることによって物質が相手の存在を感じて、まったく新しい性質になることがあるのじゃ。


oxigen_stability

単にものとものを重ねても何も起きないが、原子サイズのものどうしを重ねると面白い変化が起きる!

なるほど、じゃあ今回の発見というのは、原子サイズでものとものを重ねたときの話なんだね。

でも、聞いてる限りだと「ものとものを重ねて新しい性質をつくる」って昔からある話なんじゃないの?そんなに驚くこと?


たしかに、「ものとものを重ねて新しい性質をつくる」というのは昔からある。それはそれでとても重要な発明で、今のパソコンがあるのも、スマホがあるのも、この技術があるからじゃ。

ただし、これまでの重ね方とは全く違う点がある。回して重ねる点じゃ。


どういうこと?


もともと「もの」つまり「物質」というのは、原子が立体的に整列した「結晶」であることが多いんじゃ。


それを無理やり重ねるわけじゃから、単に重ねるというより、この「結晶」のここから上は原子Aでできていて、ここから下は原子Bでできている、という感じになっているわけじゃ。


そうか、これだと、「原子の並び方」とか「形」とかは、重ねるものどうしで同じじゃないといけないんだね。


oxigen_stability

これまでのものとものの原子レベルでの重ね方。赤い原子と青い原子は別物なので、たしかに別々のものが重なってはいるが、並び方はそろっている。

そう! だから重ねるときには、相性がいいものを選んで、向きがぴったりそろうようにしないといけない。

たった1.1°だけ傾けるなんというのは、これまでは不可能だったし、思いつきもしなかったのじゃ。


しかし、その常識を打ち破ったのがぺらぺらな紙のような物質、「二次元物質」の発見じゃ。


これを使うことで、ものとものを重ねるときの自由度が大きく広がった。そこで提案された画期的なアイデアの一つが、グラフェンという二次元物質におけるマジック・アングルというわけじゃ。


へえ~。

でもさ、マジック・アングルなんてかっこつけてるけど、単に回して重ねるだけじゃん。簡単そうに見えるなあ。


簡単だなんてとんでもない!これが「原子サイズのものを重ねている」ことを忘れているじゃろう?

原子サイズのものをちゃんとコントロールして重ねるだけでも大変なのに、すさまじい精密さが求められる実験だったんじゃ。とても難しい実験じゃ。


でも、ついにそれに成功したんだね!それで結局、何かすごい発見があったの?


それが、たくさんの興味深い発見があったのじゃ。

このあたりの面白さは上級記事で語らせてもらうことにするかの。


-Magic Angle, 初級

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