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【2018年ノーベル物理学賞 解説記事】レーシックにも使われている「超短パルスレーザ」とは?

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2018年のノーベル物理学賞は『レーザ物理の分野における革新的な発明』という功績を称えられ、Arthur Ashkin・Gérard Mourou・Donna Strickland の三名が受賞しました。

その中でも今回は、 Mourou 氏と Strickland 氏が開発した『高強度・超短パルスレーザ』についてわかりやすく紹介します(原論文はこちら)。

博士、今日もノーベル賞の話が聞きたいよ!


では今日は物理学賞について話そう。
今年のノーベル物理学賞はレーザに関する二つの研究『光ピンセット』と『高強度・超短パルスレーザ』が受賞したな。
今日のところは『高強度・超短パルスレーザ』の話でもしようかの。


レーザかぁ……。
普段から良く耳にする言葉だけど、そもそもレーザって何なの?


実はレーザというのは略語でな、Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation の頭文字を取って LASER と呼ぶのじゃ。
日本語にすると『誘導放射による光の増幅』とでも言えるかの。


へー、それは知らなかったなぁ。
でも日本語にされてもわかんないや。


それもそうじゃな。ではレーザの光がどのような特徴を持つのか、他の光と比べながら見ていこう。
まずは光がどのように進むのかを考えてみよう。
例えば、君の周りにある蛍光灯や白熱電球ではどうだい?


ぼんやり全体を照らしてるかな。


そうじゃな。普通光はあちらこちらに飛んでいく。
それに対しレーザから出た光は一方向に向かって進んでいくんじゃ。レーザポインタを想像してもらうとわかりやすいかの。


PD0
電球から出る光は広がるように進む(左)が、レーザは光がまっすぐ進んでいく(右)

もう一つ特徴があるぞ。
実は光の正体は電磁波というもので波のような性質を持っているのじゃ。
電球から出た光はこの波がばらばらに出ているんじゃが、レーザから出た光は波がそろっているのじゃ。
波がそろっていると波同士がぶつかったときに新しい波の形をつくることができる。


PD0
電球から出る光では、ばらばらな光の波が重なっている(左)。

しかし、レーザでは光の波がそろっている(右)。

PD0
光の波がそろっているレーザは、一つの波のかたまりとして使える。

つまり、レーザを組み合わせることで色々な波の形を作ることができる。

これらの特徴から、レーザを用いると特定の場所に光を当てて、情報を読み取ったり物質を加工したりできるんじゃ。


そうなんだね。
じゃあ今回の『超短パルスレーザ』っていうのは? 普通のレーザと何が違うの?


うむ。これは簡単に言うとすごく短い時間だけオンになるレーザじゃな。
例えばレーザポインタだとずっと光が出続けておるが、この光を一瞬だけ出すのがパルスレーザじゃ。


なんでそんなことする必要があるの?


大きく分けて二つある。
一つ目は短い時間で起こる出来事を観察できるということじゃ。
君はハイスピードカメラで撮った映像を見たことがあるかい?


あるよ! 水が入った風船を割るのとかでしょ? あんなことが起こってたなんて知らなかったからビックリしちゃったよ。


あれは1秒間に何万回もシャッターを切っているからなんじゃ。それと同じで、すごく短い時間だけ光を出すことですごく短い時間を切り取ることができるのじゃ。今よく使われているフェムト秒レーザというものだとおよそ10兆分の1秒というとんでもなく短い時間だけ光を出すことができる。これくらい短いと分子や原子が動いている様子も観察できる。


PD0
パルスレーザは、レーザの強さを一瞬に閉じ込めている(左)。パルスレーザは、たくさんの種類の波をうまく組み合わせることで作ることができる(右)。

10兆分の1!? 想像もつかないや!


二つ目の理由はレーザのパワーを大きくできるということじゃ。
もともと垂れ流しだった光を一瞬だけ出すことによってそのパワーもその一瞬に閉じ込めることができるのじゃ。


パワーが大きくなるとどんな良いことがあるの?


大きなパワーを持った光を物質に当てると弱い光では起こらないような現象が起きる。これを利用して物質の新たな性質を解明することができる。
材料を加工するときにも役に立つぞ。普通のレーザで材料を加工するときは、レーザを当てて加熱させて材料を溶かすことで加工してるのじゃ。しかし大きなパワーのレーザを当てると、材料は溶けることなくプラズマという状態になって散ってしまうんじゃ。これにより溶けた跡が残らずきれいに加工できるんじゃな。


へー! 大きなパワーの光だとそんなすごいことができるんだね!


しかしだな、パワーを大きくするというのは意外と難しかったんじゃ。そこで今回のノーベル賞につながってくるのじゃ。


ようやく本題だね。
そもそもなんでパワーを大きくするのが難しかったの?


簡単なことじゃ。パワーが大きすぎてレーザ自体が壊れてしまうんじゃよ。もう少し詳しく言うと、レーザには光のパワーを大きくする増幅器という仕組みがあるんじゃが、大きくしている途中で耐えられなくなって増幅器自体が壊れてしまうんじゃ。
そこで彼らは光をいったん『分解する』ことに着目したんじゃ。


光を分解? どういうこと?


先ほど光は波の性質を持っていると言ったじゃろ。この波はそれぞれ決まった波の幅を持つのじゃ。例えば赤色の光は青色の光に比べて波の幅が大きい。
超短パルスレーザでは、もともと様々な大きさの波の幅をもった光が存在している。これを回折格子というギザギザの材料に当てると、波の幅によって光の進む方向を変えることができるのじゃ。


そうして分解した光のそれぞれのパワーは小さくなる。この分解した光を順番に増幅器に入れて、パワーを大きくするんじゃ。
最後にもう一度回折格子を用いて分解していた光をもとに戻してやるのじゃ。こうしてレーザを壊すことなく、大きなパワー・短い時間の光を作り出すことに成功したんじゃよ。


PD0
今回の受賞理由となった、大きなパワー・短い時間のレーザの作り方

なるほど、最後に分解した光をもとに戻すから、大きなパワーの光はレーザの中を通らなくて良いんだね! 
ノーベル賞を受賞したってことは、この研究がすごく影響を与えたってことなんだよね?


大いに影響を与えておるぞ。さっき少し触れたが、今となっては物質を観察したり材料を加工したりするのに広く普及しており、具体例を紹介しきれないぐらいじゃ。
一番身近な例じゃとレーシック手術じゃな。あれにも超短パルスレーザが使われておる。


レーシックってあの視力を良くするっていうやつ?


そうじゃ。レーシック手術はレーザを目に当てて角膜を削って視力を回復させる手術じゃ。人間の目という非常にデリケートな部分であっても、余計な場所を傷つけずに施術できるのは超短パルスレーザのおかげじゃな。


へー! いろんなところで役に立っているんだね!


役に立つことが科学のすべてではないが、こうやって人々の生活を支える技術につながるのも科学の一つの魅力じゃな。


限界に挑戦するという観点では、さらに短い時間だけ光を出すアト秒レーザというものも開発されておる。アト秒レーザに関しては以前ここでも紹介したので興味があれば是非こちらをのぞいてみてほしい。


-Column, Ultrashort Pulse Laser, ノーベル賞, 物理学

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