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超伝導ってなに?

2016/10/20

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今回の記事は「超伝導」についてのお話しをしたいと思います。

超伝導。

誰もが一度は耳にしたことがある言葉ではないでしょうか。

超伝導は物理学で最も研究が盛んに行われている分野といっても過言ではありません。そして、私たちの日常生活を大きく変える可能性を秘めています。

 

図9

 

そんな超伝導ですが、どんな現象かご存知でしょうか?

「超伝導」という言葉を辞書で調べると「電気抵抗がゼロになる現象」とかいてあります。

 

あれ?電気抵抗ってなんだっけ??

そう思われる方も多いのではないでしょうか。

大丈夫です。この記事はそんな人のために書きました。

この記事では、超伝導について1から説明します。

 

超伝導とは

初めに、超伝導とは何か、説明しましょう。

 

超伝導とは、「電気抵抗がゼロになる現象」です。電気抵抗とは電流の流れにくさの度合いことです。単位はオーム(Ω)。

 

実は中学校の理科でみんな習っているはず。思い出しましたか?

オームの法則

オームの法則

 

電気を流すものとして金属が思い浮かびます。ご存知の通り、金属は電気を流しやすい。

金属が電気を流すのは、電気抵抗(電流の流れにくさ)が小さいからです。

 

しかし、いくら金属が電気を流しやすいといっても、我々が過ごしている環境ではすべての金属に大小の違いはあれど電気抵抗が存在しています。

少しでも、電気抵抗(電流のながれにくさ)が存在しているため電気を流すためには電池や電源からエネルギーを送り続けなければいけないわけです。

図1

ここで、超伝導とは何か。もう一度振り返ってみます。

超伝導とは「電気抵抗がゼロになる現象」。

 

つまりいったん電流が流れてしまえば、エネルギーを与えることなし永久に電気が流れてしまう。それが超伝導です。

 

こんな夢のようなことが起こりうるのでしょうか??

 

起こります。というか、もう私たちの身の回りに使われ始めているんです。

 

次に超伝導の歴史を見てみましょう。

 

超伝導の歴史

 

超伝導の発見

超伝導の最初の発見者。カメリオンオンネス。

超伝導の最初の発見者、カメリオン・オンネス https://www.nobelprize.org/nobel_prizes/physics/laureates/1913/onnes-facts.html

 

超伝導の発見はなんと1911年のこと。

オランダの物理学者であるカメリオン・オンネスによって発見されました。オンネス先生はもともとは、ただひたすらに温度を下げていく、低い温度を追及する、そんな研究をしていました。

 

温度のお話し

ここで、少しだけ温度についてのお話をさせてください。超伝導について知ってもらうために、温度の知識も少しだけ必要です。

 

実は低い温度にも限界があり、-273.15℃が低い温度の限界でこれ以上温度を下げることができません。これを絶対零度といいます。温度にも単位はいくつかありますが、この絶対零度を基準とした温度表示を絶対温度といい、ケルビン(K)という単位で表します。低温の限界の-273.15℃は絶対温度で表すと0 K。20℃だったら293.15 K となります。

物理学を学んでいるときは、こちらの単位の方が便利だったりします。

ちなみに、我々が寒いと感じる0℃、絶対温度にすると273 K は物理学的には高温に入ります。

図3

超伝導の発見

さて、低温を追及していたオンネス先生は1908年その当時の低温の記録、4.2 ケルビン (-269℃)の低温を実現しました。詳細は省略しますが、普通の環境では気体であるヘリウム(He)を液体にすることにより成功しました。

この、低温を追及するという一見何の役にも立たなさそうな研究が超伝導発見のきっかけとなります。

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気球は気体のヘリウムを利用して飛んでいる。ヘリウムを液体にするとめっちゃ低温。

 

オンネス先生はその後、自分の研究分野である低温下での、金属の電気抵抗を調べる研究を始めます。確認ですが、電気抵抗とは「電流の流れにくさ」の度合いのことですよ。

 

通常、金属は温度が下がると電気抵抗も下がっていきます。つまり、低い温度の方が電気は流れやすくなります。

図4

 

では、低い温度の限界である絶対零度、0ケルビンまでこの傾向は続くのでしょうか?

0ケルビンで抵抗はある値に落ち着くのか、抵抗ゼロになるのか、逆に上がってしまうのでしょうか。

このころにはさらに低温の記録が更新され1 K 程まで下げることができるようになっていました。

 

オンネス先生は、色々な金属の低温での電気抵抗の測定を開始。

そして、水銀の抵抗が4.2 K 付近で急にゼロとなることを発見しました。

抵抗がゼロ、電気の流れにくさがゼロ。そう、超伝導の発見です。

図5

 

当時、誰もが、発見したオンネス先生自身でさえ、温度を下げていって電気抵抗がゼロになるとは思っていなかったと言われています。衝撃的な実験結果でした。

 

物質が超伝導になる温度のことを臨界温度または転移温度(TC)といいます。

つまり水銀の臨界温度は4.2 K です。

 

オンネス先生は低温の実現の功績と超伝導の発見の功績が認められ1913年にノーベル賞を受賞しています。

 

単体での超伝導

超伝導って確かに夢のような話で、実際に起こるのですが、実用化するためにはできるだけ我々が過ごしている環境である20℃とか30℃(300 K付近)で超伝導を実現したい。物理学者たちはそんな夢があります。

そして、より高温で超伝導を見つけようと競い合っています。

 

さきほどお話しした通り、1911年に初めて水銀で4 Kの超伝導が発見されました。

 

いったん発見されてしまえば、ほかの元素でも次々と超伝導が発見されます。

現在では多くの元素で超伝導が確認されています。

下の図は高校の理科で最初に習った元素の周期表。色がついているものが超伝導が確認されている元素。高さは超伝導が出現する温度を表しています。

 

 

ちなみに、ただ温度を冷やしただけでは超伝導は現れずに、物質に圧力を加える(めちゃめちゃ押す)ことにより超伝導が出現するものもあります。

 

現在、元素の臨界温度が最も高い元素はカルシウムです。しかしながら、1位のカルシウムでさえ臨界温度は29 K (-244℃)と日常からはかけはなれたほどの低温。

さらに言えばこのカルシウムの記録は200万気圧という、とんでもない力を加えて実現しました。

 

化合物での超伝導

これまでは元素単体、つまり1種類の元素からできた物質のお話しでしたが、世の中には複数の種類の元素からからできた物質である化合物の方が多く存在しています。例を出すなら水。水の化学式はH2O。水素原子Hと酸素原子Oからできているので化合物です。二酸化炭素CO2も化合物ですね。世の中には化合物の方が多く存在します。

 

化合物は無限に作り出すこともできます。

超伝導を研究する人たちの中には、超伝導が出現するような化合物を作り出している人たちもいます。

でも、そんな人たちも最終目標は同じ。室温超伝導の実現です。

 

こちらのグラフは超伝導の出現する温度、臨界温度の記録を表したものです。物理を勉強している大学生なら誰もが1度は見たことがあるグラフです。

 

超伝導歴史

超伝導の転移温度の移り変わりhttp://www.riken.jp/pr/press/2010/20100423/

 

 

超伝導最初の発見である水銀(Hg)始まり、研究が進むにつれて記録が更新されていきました。時代がすすむにつれて複雑な化合物になってきていることが分かるかと思います。

グラフの青色の点にはすべて銅(Cu)と酸素(O)が入っています。これは銅酸化物超伝導体といわれ、一気に超伝導の転移温度が上がるきっかけとなった物質でした。

 

そして、1987年には100 K を超える超伝導が報告されました。

現在の記録は2015年に硫化水素H2Sで報告された203 K(-70℃)です。(この研究紹介はこちら

まだまだ室温超伝導とはいきませんが、最初は水銀の4 K だったことを考えるとすごいことです。

 

超伝導の応用

超伝導は少しずつ私たちの身の回りに使われ始めてきました。

 

リニアモータカーや病院にあるMRIにはなんと超伝導が利用されています。

図6

リニアモータカーは磁石の力で、車両を浮かして走っています。

磁力と超伝導、一見関係なさそうですが、実は、この磁力は超伝導を原理として作られています。

 

超伝導と磁石??

超伝導が可能にした技術のひとつとして、強い磁力を少ないエネルギーで作れるようになったというものがあります。

 

中学校の理科から復習し、説明しましょう。

私たちが通常使っている磁石、これでは新幹線のような大きな車両を浮かすことはできません。

 

より強い磁力をつくるには、どうするのでしょうか?

 

そう、電磁石です。中学校の理科で習ったはず。

電流を流すと磁力が発生する。これが電磁石の原理でした。

電磁石

 

電磁石の問題点

理論上は多くの電流を流せば流すほど強い磁力を得ることができます。

しかし、磁力をずっと維持するためには電流を送り続けなければいけません。

つまり多くのエネルギーが必要となるわけです。

さらに、電流を流す導線は金属ですから、少なからず抵抗が存在します。

そのため電流を流すと熱くなってしまいます。そのため、強い磁力を発生させるような電流を流し続けると導線が焼き切れてしまいます。

 

中学校で習った電磁石を利用するには、多くのエネルギーが必要ということと、導線の発熱という2つの大きな壁があります。

 

超伝導磁石

そこで、超伝導を利用した超伝導磁石が登場します。

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NIMS(茨城県つくば市)にある実験用の超伝導マグネット

 

超伝導とは、抵抗がゼロのことですから、いったん電流を流してしまえばずっと流れ続けます。

さらに抵抗がないために、電流を流しても導線が熱くなりません。

電磁石の導線に超伝導体を利用することにより、エネルギーの問題と発熱の問題を同時に乗り越え、強力な磁力を発生させることができるようになります。

 

リニアモーターカーはこの超伝導磁石を車両の底に設置することで、線路側にもある磁石との反発力で車両を浮かせています。

リニアモーターカーは既にいつでも実用化できる技術にあると言われています。

 

また、病院にあるMRI。今回は詳細は省略しますが、MRIにも強い磁力が必要で、超伝導磁石が利用されています。

 

超伝導磁石でいくらでも強い磁石をつくれる?

超伝導体を利用して、いくらでも強い磁力ができるかというと、実はそうではありません。

超伝導体に電流を流すと、ある電流以上で超伝導状態が壊れてしまうということが知られています。この電流値を臨界電流といいます。

この臨界電流は物質ごとに違いますが、すべての超伝導体に臨界電流が存在しています。

世の中なかなかうまいこといかないものです。

 

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超伝導のメカニズム

これまで超伝導について説明してきましたが、なぜ超伝導が現れるの?と疑問に思った方も多いはず。

なぜ超伝導が出現するのかについては、未だ完全には分かっていません。

しかし、ある程度までの理解は進んでいるといってもいいでしょう。

 

超伝導がなぜ出現するのかについて、決定的な理論が出されたのは超伝導最初の発見から50年以上たった、1957年のこと。この理論を発表したバーディーン、クーパー、シュリーファーの3人の頭文字をとって、BCS理論と言われています。

この3人はこの業績により1972年にノーベル賞を受賞しています。

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1957年のノーベル賞受賞者。バーディーン、クーパー、シュリーファー。

 

超伝導のメカニズムは少々難しく、数式なども多く使わなければなりませんが、ここでは数式なしで簡単に説明するにとどめます。

 

電子の性質

ふつう、電子同士には反発力が働きます。マイナスの電気同士は反発するので当たり前です。

そして、電子はもうひとつ重要な性質を持っています。それは同じエネルギー状態には1つしかいられないという性質を持ちます。

このような、同じ状態に1つの粒子しか存在できない粒子をフェルミ粒子といいます。

 

少し難しいですね。

初めてこの話を聞く人のために、例えを使って説明しましょう。

今、物質をマンション。電子をマンションの住人に例えます。

このマンションの部屋には1人しか入れません。これは先ほどの、同じエネルギー状態には1つしか存在できないということに対応します。そして下の階の方がエネルギーが低いため、マンションは下の階から埋まっていきます。フェルミ粒子はそのような性質をもった粒子です。

 

図7

 

超伝導の中での電子

しかし、あるとき反発していた電子同士が、引力を及ぼしあうことがあります。このとき電子は2つの電子でペア(対)となります。このように引力によって生じる電子の対をクーパー対といいます。

クーパー対

 

クーパー対は、2つの電子が対となってひとつの粒子のように見なせるため、先ほど説明したフェルミ粒子とは全く違った、ボース粒子といわれるものになります。

 

ボース粒子は、フェルミ粒子とは異なり同じエネルギーにいくらでも粒子が存在できるという性質を持ちます。そして、温度を冷やしていくとある温度で、同じエネルギー状態に大量の粒子が集まりだすということが知られています。これをボース・アインシュタイン凝縮といいます。物質中には莫大な数の電子が存在しますから、莫大な数の電子が同じエネルギー状態となることにより、抵抗ゼロで電流を流すことができることになります。

 

先ほどのマンションに例えましょう。

最上階では2人の住人がペアを組みます。この2人組のペアがクーパー対に対応します。そして最上階では部屋の壁が取り払われ(同じ状態に複数の粒子が存在できる)、住人たちは自由に行き来できるようになります。

壁が取り払われて住人が自由に動き回れるというのは、抵抗がゼロで電流が流れる、超伝導状態が出現したと考えることができます。

図8

 

きちんとした言葉でまとめると、超伝導状態では2つの電子間に引力が働き、クーパー対を形成する。クーパー対はボース粒子であるため、ある温度以下でボース・アインシュタイン凝縮をおこし、超伝導状態が出現すると言うことができます。

ちょっと難しいですね・・・

少しだけでもお分かりいただけたら嬉しいです。

(この章でのマンションの例えは『トコトンやさしい超伝導の本』下山淳一著、日刊工業新聞社、を参考にしました。)

 

室温超伝導の夢

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これまでに説明しまたが、今現在、超伝導を利用するためには、冷やすという労力が必要です。

もし室温超伝導が実現したら、発電、移動手段、電子機器、などのすべてに超伝導体が使われるようになるでしょう。

誰もが思いつかなかったような、あっと驚く大発明も生まれるに違いありません。

 

室温超伝導は実現するのでしょうか。5年後?10年後?100年後??いや、明日発見されるかもしれません。

楽しみです。

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