PMF

【上級】体内時計を電気で操る!?

2016/07/08

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2014年、東京大学、九州大学、北海道大学、産業技術総合研究所の共同研究により、体内時計の電気化学的制御に成功したことがAngewande Chemie International Editionに報告され、Hot paperに選定されました。

今回はこの報告について解説したいと思います。

概要:体内時計と酸化還元状態の関係

今回制御することに成功したとされる「体内時計」とは、その名の通り生物がその体の中に元来有している時計のことです。

私たちヒトを含め、多くの生物は固有の体内時計を使うことで、時計を見なくても大体何時ごろなのかが分かるのです。

しかし、昼なのか夜なのかという一日のリズムは、地域によっても、季節によっても異なります。

そのため、体内時計も周りの環境に順応し、少しずつ時計の針をずらすような仕組みが存在していると考えられます。

体内時計3

こういった生体現象の仕組みは非常に複雑であることが多く、体内時計も例外ではありません。体の中では、数多くの分子やタンパク質が密接に関連しあうことで体内時計は制御されているのです。

 

しかしそのような中でも、「体内の酸化還元状態」は極めて大きく体内時計に影響することが分かっています。

例えば今回の発表の題材となった光合成を行う微生物では、「KaiC」というタンパク質のリン酸化反応が約24時間周期で行われることから体内時計が形作られているのですが、このKaiCのリン酸化反応はプラストキノン(PQ)と呼ばれる分子が酸化されると一度リセットされ、強制的に夜だと感じるようになっています。

PQ

PQと体内時計。酸化体のPQによりKaiCのリン酸化が抑制され、体内時計がリセットされる。

PQは昼の光合成時には還元され、夜の呼吸時には酸化することから、PQの酸化還元状態により実際の時間を認識し、体内時計を調節しているのです。

 

そこでこの報告では、このPQの酸化還元状態を電極により調節することで、人工的に体内時計を制御することを試みました。

 

電気を利用した体内時計の制御

しかしここで問題となるのは、PQの酸化還元状態を制御する方法です。

微生物を含め細胞は絶縁性である細胞膜に覆われているため、通常は細胞・電極間で電子のやりとりを行うことができません

そのため、細胞膜を通り抜けて電子を運んでくれる分子が開発されてきましたが、どれも微生物にダメージを与えてしまうため、体内時計のように数日単位の観察を行うことは不可能でした。

そこで考えられたのがPMF(poly(2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine-co-vinylferrocene)と呼ばれる、微生物や細胞に害の少ない電子キャリアーです。この分子は疎水性と親水性を兼ね備えているため、自由に細胞を通り抜けることができ、細胞との電子の授受もスムーズに進行します。

PMFメカニズム

PMFを利用した体内時計制御メカニズム

このPMFを使うことで12時間PQを還元(昼と同じ状況)し、12時間PQを酸化(夜と同じ状況)させていくと、ばらばらの体内時計を持っていた微生物たちが、きれいに体内時計をそろえることが確認されました。

さらに、PMFを利用したPQの酸化還元反応を止めても体内時計が3日以上保たれたことから、PMFは単に体内時計刺激しているのではなく、体内時計を制御していることが分かりました。

 

また、PMFを利用した体内時計を検知する方法も昨年報告されており、PMFを用いた体内時計の研究は飛躍的に進んでいるようです。

今回微生物で成功したように、様々な生物で体内時計を操ることができるようになれば、今後私たちの体内時計を制御することも夢ではないかもしれません。

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-PMF, 上級

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