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【中級】がんをピンポイントイメージングするナノマシン造影剤

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 東大、東工大、ナノ医療イノベーションセンター、量子科学技術研究開発機構の共同研究により、「MRI検査を用いるがん組織のみの画像化を可能とするナノマシン造影剤」の開発に成功したという発表がありました。これは、今までMRIでは検出できなかったがん組織も検出できるようになる画期的な技術であると考えられています。この成果の何がすごいのか見ていきましょう。

MRI画像診断

 最近は医療ドラマ等増えておりますのでMRIという名前を聞いたことがある人も多いと思います。実際にMRIによる診断を受けたことがある人も中にはいらっしゃるかもしれません。MRIの原理については説明すると長くなってしまうので省きますが、ざっくり言うと原子(例えば水素原子)の密度の違いがコントラストとして画像として現れるくらいに思っておけば十分かと思います(専門家の人ごめんなさい)。

 

 例えば血栓が出来てしまっている場所は普通の血液とは状態が異なるので、画像から判断できるといった感じです。しかし、ただMRIを撮るだけでは正常な場所と病巣の違いがわからないことも多いのです。そこで、微妙な違いを画像とするために造影剤が使われます。造影剤によって画像を見やすくするのですね。

 これだと造影剤を投与するだけでいいような気もしますが、造影剤を投与するだけでは見えないものもあるのです。

見えないものを見ようとして~MRIがん診断~

 近年ではMRIによるがん診断も多く行われています。MRIによるがん診断で難しいところは初期のがんや転移がんといった小さながんは、MRI画像から見分けることが難しく、MRIがん診断が苦手とする部分です。そのため、小さながん組織でも検出できるようにするため、造影剤ががん組織にのみ集まる必要があります。研究チームはがん組織の環境を認識してそこでのみ溶解するナノマシンを開発し、そのナノマシンに造影剤を搭載することでがん組織にのみ造影剤を届けることに成功しました。
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将来性

 この成果のすごいところは2点あり、①がん深部まで造影剤が到達していること、②非常に小さな転移がんまで検出していること、が挙げられます。この開発によって高い解像度で3次元的に解析する手段が得られ、今後、がんの性質を見極める診断や、効果を確認しながら治療や創薬を進める新しい医療の形成が期待されます。

 もう一つ重要なことは、この結果は実際の病院でよく使われているスペックのMRIにより得られていることです。研究の世界にはものすごく高感度なMRIの開発を行っている研究者の方々もいらっしゃいますが、そのような高感度MRIは当然値段も相応のものです。つまりこの成果は「いつでも、どこでも、だれでも」利用でき、検出の高感度化を可能にする革新的な造影剤として今後の更なる発展が期待されます。

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