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【中級】モノポールを固体中で生成、制御!

2016/07/01

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先日、東京大学と理化学研究所のグループが
固体中のモノポールの生成消滅過程とそれによる電気磁気効果
に関する論文を発表しました。

プレスリリース

今回はこの研究について…

 

モノポールって?

モノポールとは、磁石のN極、またはS極が単独で存在しているものを指します。

思い出してみると、小中学校の実験で使った棒磁石やU字型の磁石はすべてN極とS極がセットになっていました。

では、この磁石をN極の部分だけ切り取ってしまえばモノポールができる…かと思いきや、実はそうはいきません。

mag3

 

磁石をあるところで切り取ると、切っても切ってもNとSはペアで現れるのです。

このように、少なくとも今の技術ではN極だけ、S極だけを孤立させることは不可能であること、すなわちモノポールは存在しないことが知られています。

 

磁力線

一般に磁石からは磁場が出ています。 この磁場を目に見えるように線で表したものを磁力線と言うんでした。

http://www.max.hi-ho.ne.jp/lylle/jikai1.html

http://www.max.hi-ho.ne.jp/lylle/jikai1.html

図を見て分かるように、N極から出た磁力線は、S極へと入っていきます。

では、もし、仮にモノポールが存在したとするとどのような磁力線を描くでしょうか。 これを描いてみたのが下の図です。

monopole

赤丸で表したモノポールから放射状に磁力線が出ることになります。

磁力線は磁場の向きを表していますから、モノポールは磁場の湧き出しを表しているのです。

逆にS極だけのモノポールは磁場の吸い込みを表します。

 

固体中でのモノポールとは

さて、今回の研究のテーマである、固体中のモノポールとはいったい何なのでしょうか?

実はこのモノポール、真の意味のモノポールではありません。
固体中には実に様々な有効磁場、すなわち ”磁場とみなせるもの” が存在します。

固体中での磁場の効果と言えば、電子の運動をローレンツ力と言われる力によって曲げてしまうことです。

Lorentz

つまり、電子を曲げてしまう効果を全て有効磁場という言葉で表してしまいます。

この時の有効磁場の向きを理論的に描いてみると、上で描いたモノポールと同じ形をしていることがあるのです。

これが近年固体中に見つかったモノポールの正体でありまして、真のモノポールと区別するために創発モノポール(emergent monopole)と呼ばれています。

今回の研究では、この創発モノポールが温度変化や磁場印加によって生成消滅していく過程を制御し、観測した、ということだったのでした。

 

創発モノポール?

ではそのようなモノポールに見えるだけの創発モノポールを制御できると何がうれしいのでしょうか。
まず第一に電子制御への応用が考えられます。

創発モノポールは、電子の軌跡を(本物のモノポールと同じような形に)曲げることができます。

これによって今まで不可能であった方法で電子の動きを制御することが可能となり、新規デバイスの開発へつながるかもしれません。

一般に磁場による電子の制御はエネルギーの損失を伴わないことが知られていますから、超伝導とはまた違うメカニズムによる省エネルギーデバイスも夢ではないかもしれません。

 

第二に、真のモノポール探索に向けてのヒントを得ることが可能になるかもしれません。

最初に述べた通り、真の意味でのモノポールはまだ見つかっておらず、今でも多くの素粒子物理学者が探索を続けています。

モノポールの性質を固体中で調べることは、その探索にヒントを与えてくれるかもしれません。

 

 

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-Monopole, 中級